2枚落ちの勝ち方

今回は2枚落ちの勝ち方です。

これまで見てきた4枚落ち、6枚落ちでは、下手は上手の弱点の端を攻めて攻略できましたが、2枚落ちでは、上手の陣形のバランスが良く、隙がありません。そこで、飛車角のハンデが最大限に生きるような駒組をめざします。

将棋の基本~自分の駒を最大限に生かし、相手の駒の働きを悪くさせる~を2枚落ちを通して覚えて、平手の将棋にも生かしてください。

まずは、最もよく知られている「二歩突っ切り(にふつっきり)戦法」の基本パターンを見てみますが、伝統的に有力視されている「銀多伝戦法」と、「上手変則編(53金~55歩)」も追って解説します。

二歩突っ切り戦法

※埋め込み将棋盤ツールは「≪」「≫」で一手ずつ動かせます。また、「|<」でスタートの局面まで一気に戻すことができます。

  A図

下手、初手、角道をあけた後、46歩、45歩と4筋の歩を伸ばして行きます。

それは何故かというと、上手に44歩と角の利きを止められ、43銀とされると、21の桂馬も、34歩、33桂馬と使われてしまうからです。

そうさせないために、46歩~45歩と位をとり、角の利きを33まで直接通るようにすることが大切です。

そこから、3筋の歩を伸ばし、33の歩を動かして11角成を狙います。上手は、22銀、32金の形にして守るしかありません。

大切なのは、45歩、35歩が、上手の金と銀を32と22に固定することが出来るということです。

上手の、32金、22銀は、最強の守りですが、角道を通されているので、どちらも動くことが出来ません。このまま狭い所で、じっとしていてくれたら飛車角のハンデ以上のハンデが作れるということになります。

下手は、飛車を38により1歩交換をして、36に引きます。

この手の意味は、歩を手に持つ意味と、飛車を36に引いて、横にも利かす事、37桂馬とはねて、45の位を守る意味があります。

38飛車のまま、37桂馬とはねるのは、ひどい形です。

それは、飛車の働きを悪くしてしまうので、効率よく駒をつかっているとは言えません。

銀を、48銀、47銀と上がって行きます。

この手の意味は、45の位を守るためや、55歩と位を取って来た時に、46銀や、56歩と反撃する狙いがあります。

2枚落ちは、将棋の駒を全部使って攻略します。攻めは、飛車角銀桂です。

その銀ですが、銀という駒は、後ろに2か所下がれます。金は後ろに1つ。ということは、銀の方が前で戦った方が戻って来やすく、金は下がって、上からの攻撃に備える、という形になります。

銀を47まで上がって、そのあとは、王様を囲います。

居玉は避けよという格言がありますが、居玉のまま戦うと、反撃されたときに、すぐにやられてしまうので、上からの攻撃に強いカニ囲いにして決戦を目指します。

平手将棋の時は、カニ囲いは飛車交換に弱いのでやめた方がいいです。2枚落ちは相手に飛車が渡ることはほぼないので、この囲いで十分です。

上手は、玉を3段目まで上がり、金で75歩を交換してきます。よく85金から、76金と歩をただで取りにくることがありますが、自分の歩を越して攻めてくる攻めは怖くありません。

  A図

上手く行くと、A図から、4筋で銀を交換して、その銀を7筋で上手の守り駒の金と交換でき、第2図まで行けば大成功です。

※「|<」でA図の局面まで戻ってから「≫」で一手ずつ進めてみてください。

図2

図2からは、31銀打ちの受けには、21金と桂馬を取り…

次に32歩打ちがあるので、44歩ですが…

32歩

同金、45桂や、45歩とあわせたりすると、自然に駒得していきます。

途中、△43歩のところ、角道をとめる44歩の受けには…

45歩とあわせます。

この手の意味は、同歩なら同桂ととり、角と桂馬で53の地点を狙います。

上手は45歩に対し、同歩とは取りません。それは何故かというと、26に角を引いた局面と、同歩、同桂となった局面を比べると、下手だけ1手多く指したことになるからです。

※逆に、上手から攻められた場合、下手はこのような「お手伝い」をしてしまいがちですね。

45歩には、43金と上がるくらいでしょうが…

ここでの指し手は2つあると思います。考え方としては、現時点で44の地点は、下手、26の角と、45の歩、対して上手は53の銀と43の金、2対2です。将棋は足し算です。44の地点に駒の利きをたす35銀と打つ手が有力です。

もう一つは…

32銀と、43の金取りと、21の桂取りに打ち…

上手は43の金を守りますが、21銀成りとして、次に22の銀もとってしまえば、駒得が大きく大優勢です。

※「|<」で▲45歩と合わせる局面まで戻ってから「≫」で一手ずつ進めていってください(図3、図4とも)。

 図3

図4

図4までの順は一例ですが、王様を寄せる時に、気をつけなければいけないのは、将棋の駒は前に進むように出来ているので、下から追いかけるのは寄せづらくなるということです。上から押すように寄せるのが鉄則です(きちんと読んでいれば問題ありません)。

ここから、52銀、6四玉、6三金と下から追いかけるのは55玉と逃げられてしまうので、褒められた手順ではありません。

上手は55玉から上部脱出を狙っているので、55玉の時に、56金と打てるように金を残しておきたいところです。

ここは75銀と上からかぶせるように打ちます。

もしも、同金、同歩、64玉なら…

74金、55玉に56金と打って詰ませることができます。

なお、「終盤は駒の損得よりもスピード」です。序盤での駒損は、そのまま不利になっていきますが、終盤は王様を動けなくすればよいので、飛車、角を大切にしなくて大丈夫です。

下(E図まで)は、A図に至る前の段階で、上手が△75歩以下の動きを見せなかった場合の棋譜です(実戦では、なかなかこうはうまく行かないかもしれませんが…)。

※「|<」で序盤まで戻ってから「≫」で一手ずつ進めていってください。

E図

上手が、44歩からの攻めを警戒して、55歩と角道を止めてきた場合、慌てる事はありません。

この55の位を上手は、守ることが出来ません。理由は下手には55の地点をにらむ角がいて、上手には角がいないからです。

46銀と上がり、56歩から、55の地点を狙います。

66歩は、「大駒は近づけて受けよ」の手筋ですが、73の桂馬を65の地点に跳ねるスペースを作った「突き捨て」の歩でもあります。

こういう手は上手特有の手というわけではないので、しっかり吸収してください。

対して下手は同歩と応じます。65に桂馬が跳ねられるのが嫌なのと、64に金がいる限り、いつでも先手で65歩とつけるからです。

※「|<」で▲34歩の局面まで戻ってから「≫」で一手ずつ進めていってください。

F図

34歩に対して△同歩と取った場合、十字飛車を狙って55歩と打ちます。

55歩同銀は、65歩があるので、55同金。

同銀、同銀に54金。

同玉に34飛車が王手金取りで十字飛車が決まります。

上手の36歩はごまかしの手です。

上手は入玉を目指しますが、37の桂馬が邪魔しています。そこで、入玉を狙うのと同時に、桂馬を手に入れて、57桂からの寄せをみています。同竜は46金と打ち、竜を攻めながら、上部を厚くし、57の地点に駒を利かします。

以下、32竜にまた36歩。

上手は、歩を1枚犠牲に、金と歩を続けて打てた事になります。このように、大駒を近づけて、大駒に当てながら、攻める、それがコツです。

なので、1回目の36歩と打たれた時点で、タダだと思ってすぐ取るのではなく、上手が何を狙っているか、考えなければいけません。

そこで、本譜は、36歩に対して、強く44歩です。

上手は45金と打たれると困るので、37歩成りと桂馬をとってきます。将棋の勝つコツは、いい時は、相手の選択肢を少なくし、悪い時は相手に選択肢を沢山与えるようにします。この44歩は、相手の選択肢を少なくする手でした。

37歩成りに、43歩成。

これは、次に34竜を狙っています。

それを受けて33歩ですが、46桂については後述します。

33歩は入玉をしたいという意味です。それに対して、やってはいけないのは、52竜や、53金などの上に逃す王手です。上手は45に上がりたいのに、自分の手番を使って、王様を逃す。これは【王手は追うて】やってはいけない王手です。かけなければいけない王手もあります。逃す王手はしないほうが寄せやすいです。

33歩に対し、上手玉を45に逃がさないために46歩と待ち駒をします。

一見すると55の銀が利いていて取られて意味のないように思えるかも知れませんが、55の銀は、44の地点を守っている駒なので、46の歩を取ることにより、王様の守りを薄くすることができます。

46同銀に対して、44金。

この王手は打たなければいけない王手です。上手は45玉、36玉と入玉を狙っているため、それを阻止しなければいけません。44金に対し、55玉は、52竜で詰んでしまいます。そのため64玉ですが、これで上手の入玉は不可能になりました。64玉にたいしても、62竜は、63金ではじかれるので、先に53とと寄ります。あとは、竜とと金で協力して王様を追い込んでいけば勝ちます。

※「|<」で▲34歩の局面まで戻ってから「≫」で一手ずつ進めて復習してください。

F図

※「|<」で▲43歩成の局面まで戻ってから「≫」で一手ずつ進めてください。

G図

46桂からの攻めに対し 王様を下段に追い込んでから、59歩と受けます。そして47とに、53とと寄って勝ちになります。

銀多伝戦法

H図

銀を4筋に、2枚並べて戦う戦法を銀多伝戦法といいます。とても優秀です。飛車は中飛車に振ります。45、35,の位はとります。そうすることにより、上手は32金、22銀とするよりなく、金と銀の動きを封じることが出来ます。

早めに5筋の歩を交換して、59まで引きます。これは、金を弱い角頭を守るために78に上がるのですが、その時に銀交換すると69銀と打たれてしまうと、守りの金を取られます。そうなると角の頭も弱くなるし、5筋からの攻めも遅れます。そうならないために飛車を1段目にしておきます。

上手が75まで金が来たら、78金と上がります。一応77歩という攻めを事前に防いでいます。77歩は、角でとれば、76金と角に当てながら、金を前に進めてこようという狙いですが、そこで、角を捨てて78金と上がり、角金交換をすれば、上手歩切れが痛く、7筋から下手攻略できますが、78金と守っておいた方が無難です。

自陣を万全にしてから、55歩と再度仕掛けます。同歩に対し、同銀では、また54歩に下がらないといけません。55同歩に、54歩と持ち駒の歩を生かして、銀の交換をします。55銀に同銀は、同角で上手支えられません。

I図

J図

J図は、金がどんどん攻めてきた場合、香取りが受かりません。歩を越して金で攻めてくるのは、無理があります。

K図

K図は、金が歩を越して攻めてきた場合です。歩を越して金が来ても気にすることはありません。同じように組しっかり王様を囲って仕掛けます。

上手の、48歩成、同金、46歩は手筋なので覚えて下さい。この手は相手にせずに55銀から飛車が成り込み一気によせます。55竜から、64歩は上から抑えるように攻めます。

55角は、75玉に対し、64角を用意した手、攻めとしては73角成、75玉、64馬を見ています。

86金に対し、82竜から、83竜は、上手の玉は詰みませんが必死がかかります。自玉が安全の時は、飛車でも角でも切って上から抑え込めば大丈夫です。86の玉に77金が用意した手、そして王様を下に追い返しはじに追い込んで96歩、これで必死です。将棋は王様を動けなくするゲームです。

L図

銀多伝をやると、金を受けに使い待っている時があります。特に問題はありません。下手はやりたい手が沢山あるので、37桂馬、26歩と、64の金が75歩、同歩、同金と動くまで待ってみましょう。上手は32金と22銀を使いたいと考えます。しかし42金と、王様の近くにもってこようとすると、22の銀が浮いてしまうため、下手はすぐに34歩と突くことが出来ます。

それがいやなので、24歩23銀の形にしますが、金が42にいった瞬間に、22の地点に空間が出来るので25歩と仕掛けて行きます。

M図

M図は、ずっと上手が動かない場合は、金と銀を交換して飛車を1番下まで引いておきます。それでも仕掛けてこない場合は、36銀、29飛車、などの2筋を逆襲する手があるので、上手は動くしかなくなっていきます。55歩は、ほっとけば54銀と上がり、盛り上がって行こうという手ですが、数の攻めで大丈夫、46金とうち、54銀に、56歩から、55の地点に駒を足して行きます。数が上回れば破れるからです。

あとは、強引に竜を作り、駒損を回復して、また建て直せば、上手手が無く、投了級です。桂馬も交換し、手ごまを増やして、あとは、桂の頭を攻めつつ、再度竜が敵陣に入れば勝ちです。

M図まで行くと、上手手がありません。52金と守りを強くしたいですが、64桂があるし、54歩は、97角と覗かれてしまいます。

上手変則編

N図

上手が変則的に、53金と出て、55歩と捨て、金が54に出て、45歩を取る指し方があります。その時は、上手の陣形が下手から見て左が弱いので、左を狙ってみましょう。

N図までいけば、飛車成りと、21飛成の桂取り、両方受からないので下手必勝です。

O図

73銀の受けで、73歩の方が手堅い受けです。それは75飛車と引いて、いきなりは攻めれないので、45の金と、39の銀を交換を狙って指します。O図は一例ですが、飛車を85に戻す手は大切で、84歩から、飛車の捕獲を狙われる手を防ぐのと、逆に浮きゴマが出来たら、84歩からの十字飛車を狙って指します。

いろいろ書きましたが、参考になれば幸いです。

実戦編

ぴよ将棋で実戦してみます。

  A図

2歩突っ切りで倒します。

上手11手目 64銀と出ました。本来は22銀と守るべきところです。

B図

22銀と守らない上手には、すかさず34歩と突きます。そして22銀に対して、33歩成り、同銀、34歩、22銀と、上手を抑え込みます。このように、歩で抑え込めた場合は、その歩を守るために、飛車で34の歩を支え、45の歩も守るために、銀を48,47と繰り出して行きます。位をしっかりキープしてから王様を囲います。

 C図

将棋の基本、攻める体制を作ったら王様を囲います。34歩とポイントを取っているので、王様を囲わなくても攻め倒せそうですが、ここではしっかり囲って戦ってみます。上手は、73桂馬と跳ねてしまったため、75歩の攻めは無理とみて、組み換えて来ました。

D図

36飛車は、29の桂馬を37に跳ねたいため、これで、銀、桂、角、飛車の攻め、プラス34の歩で、33の地点に全部を利かす準備をします。上手は、このままではじり貧のため、暴れてきますが、しっかり抑え込んでいるため、どうしようもできません。

E図

33歩成りから、再度34歩と抑え込みます。上手は下手が間違えるのを待っているだけなので、しっかり上から抑え込んで攻めます。22銀に25桂馬でもよいですが、より優勢にするために44歩と突き、空いた空間の45に桂馬を打ちます。25に打つよりも、45に打った方が、王様に近い53にも利くため、桂馬の働きがいいです。上手は21桂と受けますが、少し前の局面と比べると下手の桂馬が25から、45に移動した形で、有利が拡大しています。

F図

上手はなんとかごまかそうと歩をうったり、突いたりします。

もし、上手の手の意味が分からない場合は、取った方がいいと思います。自分が想像してない手があれば勉強になるからです。今回は、35歩。66歩、55歩、ごまかしの手で全部取って応じます。

  G図

もう終盤戦です。

2枚落ちで、角と相手の王様を守っている金を取り替えると、大抵よります。なので本譜も惜しげもなく、角を金にぶつけに行きます。

  H図

41銀は、42成桂、同金、43歩の方が厳しかったかもしれません。

寄せの基本は、王様を攻めるよりも、王様の守りの駒を攻めます。41銀、32金を狙った手です。取ってくれれば、52金から詰みます。

34歩、王様の守りの駒を攻めます。駒得の攻めは切れません。

  J図

最後は長いですが、詰みです。

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